ところで福祉問題では、かつては北欧とおなじスタンスのイギリスは早くから福祉国家を提唱したけれど、実際には保守主義の潮流のもとで北欧にはるかに遅れてしまい、北欧型のなかでは少し異質な印象さえ与えています。北欧諸国がおおむね基本的な平等社会をつくりあげて、まがりなりにも安心して老後を迎えられるのと比べると、イギリスは貧富の差が大きく、つの国といっても、そのなかに先進国と後進国の両方をもっているようなものですから、こちらの問題のほうが大きくて、そのせいで福祉国家は口先だけの空約束になってしまったのかもしれません。ヨーロッパ大陸のなかでは福祉にもっとも古くから取り組んでいると言われているのは、やはりフランスですが、ナポレオン時代からあるという老人ホlムに行ったときのことです。昔はサナトリウムだったとかで、素晴らしい環境にあります。庭園の真ん中に花園があって、病室が全部庭に面している。で、「こんないい施設にすぐ入れるのですか」と聞くと、返ってきた答えは「なかなか入れません。三年、待機している方もいますがしということでした。もう少し詳しく質問すると「そうですね、パリ市長とか、大統領の紹介があると特別に入れます」と教えてくれたものです。日本の一部の施設でもそういう噂がないでもないところをみると洋の東西を問わず古い国にはいろいろとあるのでしょうか。しかし日本の措置入所のように本人の希望以外のどこへ入れられるのかわからないということはありません。日本は市町村主義そのものはよいのですが、行政の権限が強すぎます。フランスのナlシングホlムの運営は一番上のポストに医者がいたり経営者がいて、各フロアごとに総監督の看護婦さんがいる。その下に介護士がいて、さらに下が掃除などをする用務の人。そういうふうにタテの体系がぴしやっとできています。ホームへはどこからお金が入ってくるかというと、年金からで、年金をもらえない人は出身地から生活保護をもらい入所している仕組みになっています。したがって社会扶助でも、本人にお金がいくので必ずしも日本のような市町村の措置ではないのかもしれません。きて、ヨーロッパ大陸型のなかで日本と一番近い社会体質をもっているのは、介護保険制度をひと足早くスタートさせたドイツです。共通点は日本もドイツも医療保険制度が発達していることです。ドイツは各州ごとに保険料をストックしておく「疾病金庫」というファウンデーション(基金)があって、医療が必要なときはそこから出される。